最近のプロトコルの乱れには目を覆いたくなるようなものがありますね。
そんなわけで、RFCを制定はすれど実装には不干渉を貫いてきたIETFも、ついに本腰を入れて動き出すことになりました。
以下はRFC 8962 Establishing the Protocol Policeの日本語訳です。
Establishing the Protocol Police
Abstract
IETFの理念のひとつに、「We are not the Protocol Police」というものがあります。
しかし、プロトコルがIETF標準に完全に準拠する形で展開されるようにするためには、プロトコルの正しい動作を保証し、実施するための組織を設立することが必要です。
本文書は、プロトコル警察を正式に設立するものです。
本文書では、この組織およびIETFプロトコルを取り締まる方法を定義します。
本文所は、ネットワークエンジニア、法執行機関の職員、政府代表者などが参照するためのものです。
また、プロトコル警察に問題を報告する際のアドバイスも記載されています。
1. Introduction
IETF参加者は、次のような事態にしばしば直面します。
すなわち、開発者や企業がRFCの詔に従わない。
このような事態を放置しておくと、予期せぬ、不当な、望ましくない結果をもたらします。
IETF参加者の多くは、どのようなプロトコルは受け入れられないかを宣言すべきであり、RFCに準拠しないプロトコルのメンテナや開発者を処分するべきだと考えています。
もう一方では、「We are not the Protocol Police」という文書化されていない理念に殉じる人もいます。
残念ながらこの現状が、プロトコル仕様の適切な解釈を誰が判断すべきかという混乱を招いています。
本文書は、これまでIETFでは文書化されていなかった「プロトコル警察」を正式に設立するものです。
本文書では、この組織およびIETFプロトコルを取り締まる方法を定義します。
本文所は、ネットワークエンジニア、法執行機関の職員、政府代表者などが参照するためのものです。
また、プロトコル警察に問題を報告する際のアドバイスも記載されています。
本文書で定義されているプロトコル警察は、全てのIETF標準およびベストプラクティスを執行する責任を持ちます。
2. Definitions
IETFの歴史上おそらく初めて、SHALL
やMAY
が強制力を持った言葉として使用されています。
3. Composition of the Protocol Police
プロトコル警察は、RFC 3797において定められたIETF指名委員会(NomCom)によって、
IABやIESGの選出に用いられたRFC 8713と同じ方法で選出されることとします。
ただし、プロトコル警察のメンバー名は公表されません。
これは、コミュニティのメンバーからの不当な干渉や圧力を防ぎ、より効率的に活動するためです。
プロトコル警察の最初のルールは$CIPHERTEXT
です。
3.1. Recognizing the Protocol Police
複数の人が「私はプロトコル警察ではない」と言った場合、少なくとも一人は真実を語っていません。
プロトコル警察は仲間が大好きであり、決して一人でいることはありません。
あなたはプロトコル警察ではありません。私たちです。
私たちはプロトコル警察ではありません。あなたです。
3.2. Recruitment
プロトコル警察に興味のある人はlocalhostにコンタクトしてください。
あなたの行動は監視され、あなたの実装がRFCに完全準拠しているか分析されます。
過去と現在のあなたがプロトコルに忠実であれば、もちろんNomComはあなたを歓迎して仲間に迎え入れます。
しかし、もしあなたが罪を犯していたとしたら、調査結果は将来の訴訟であなたの不利になるように使用されることがあります(MAY)。
プロトコル警察のメンバー適正を評価する際、RFC 4041 Internet Moral Majorityに情報が提供される可能性があります。
疚しいところがなければ、恐れることは何もありません。
4. Support for the Protocol Police
プロトコル警察の存在と運営を支援するためには、policing by consentのコンセプトが必要不可欠です。
幸いなことに、IETFコミュニティと全ての利害関係者は、存在しているだけで、本文書の存在に助けられていると考えられます。
5. Punishable Offenses
5.1. Protocol-Layer Violations
越えてはいけないプロトコルレイヤーの境界が存在します。
許可されるレイヤ違反は存在しません。
レイヤは抽象的な存在であるにもかかわらず、それを維持すべき正当性とアイデンティティが存在します。
それを守るためにプロトコル警察が存在するので、プロトコル警察はそれを遵守しなければなりません。
5.2. Deliberate Non-Interoperability
プロトコル警察は、相互運用性を損なっているクローズドプラットフォームへのアクセスも許可されています。
同時にプロトコル警察は、NTPのレガシーな相互運用性オプションを全て遵守し、少なくとも2147483649年まではExtensible Messaging and Presence Protocol (XMPP)を使用して連絡を取ることができます。
5.3. Disobeying RFCs
初めにRFCがあった。
RFCはネットワークと共にあった。
ネットワークはRFCであった。
すべてのものは、RFCによってできた。
できたもののうち、一つとしてRFCによらないものはなかった。
このRFCに命があった。
そしてこの命はインターネットの光であった
汝、RFCで定められた道から逸脱してはならない。
さもなくば、汝はデータプレーンに散るであろう。
6. Reporting Offenses
違反の可能性、不正行為についての全ての報告を/dev/null
に送ってください。
プロトコル警察は報告を適切に処理します。
7. Punishment
7.1. Traffic Imprisonment
プロトコル警察は、IETF参加者の誰もが当然知っているべきである、RFCに記載されている単純な戒律が理解できていないホストやクライアントのリストを管理します。
このRFCが標準化された場合、IANAにアドレスのリストを登録する必要があります(セクション9を参照)
公に通知された期間、他の全てのネットワークは、該当アドレスから発信された、もしくは該当アドレスに向けられた、あらゆるネットワークパケットをブロックしなければなりません。
これにより、犯罪的ネットワークを効果的かつ強制的に遮断することができます。
プロトコル警察は、脅威分析のために強力な機械学習メカニズムを用いて、RFCを守っていない可能性の高いネットワークを特定します。
このプロセスはHeuristic Internet Policing (HIP)と呼ばれています。
このようにして特定されたネットワークは、プロトコル警察によってTCP RSTが送られます。
プロトコル警察は、常にHIPから送信します。
8. Morality Considerations
このセクションは、RFC 4041に沿った道徳的な配慮がなされています。
我々は、王、大統領、投票を否定する。
我々は、ラフコンセンサスとランニングコードに準ずる。
我々は、次のものにだけ首を垂れる。すなわち、プロトコル警察。
- 私の友人、Dave
Woop! これはプロトコル警察だ!
Woop! これは獣のパケットだ!
- KRS-ZERO、[RFC 3514](https://tools.ietf.org/html/rfc3514)の邪悪なビットを発見して
8.1. Oversight
全てのプロトコル警察は、説明責任を果たし、監視される対象とならなければなりません。
全てのプロトコル警察は、自らの行動と監視に全責任を負い、全ての活動を監視されることに同意します。
9. IANA Considerations
このRFCが標準となった場合、IANAは犯罪ネットワークとアドレスのレジストリを適切に設定しなければなりません。
もしIANAがこの命令に従わない場合、プロトコル警察はICANNに報告します。
10. Security Considerations
プロトコル警察の前にセキュリティは存在しません。
警察だ。
君達のネットワークは、全て我々がいただいた。
11. Privacy Considerations
プライバシーへの配慮はありません。
12. Human Rights Considerations
貴方が心配するようなことはありません。
全て警察が対応してくれます。
13. Conclusion
一件落着。
Acknowledgments
プロトコル警察のメンバーは、Daniel Kahn Gillmor、Mallory Knodel、Adrian Farrelからの全てのネットワークトラフィックにACKしなければなりません(MUST)。